こんにちは、Mです。
うう、寒い。外は冷たい風が吹いてます。皆さん、風邪など引いてらっしゃいませんか? インフルエンザは大丈夫?
でも今、世間には「不況」という、もっと冷たい風が吹いてます。いや、不況なんて生易しいもんじゃないな、これはもう「大恐慌」というべき事態ですよね。もしかしたら資本主義の終焉じゃないか、という思いすらするほどです。毎朝、新聞を広げるたびに目に飛び込んでくるのは、日本を代表するような大企業が軒並み、赤字転落、人員削減策発表、と背筋も凍るような記事ばかり。
なにしろモノが売れません。我が愛するクルマという商品など、その最たるもの。どのメーカーでも生産量を大幅に減らして調整しようとしていますが、それでも新車登録台数は全く伸びません。基幹産業たるクルマ業界がこれじゃ、日本の経済は、そう簡単に持ち直してくれそうもないよなあ。そう嘆いていると…
「いや、実はこの金融ショックのずっと以前から、俺たちはクルマ販売の将来に危惧を抱いていたんだよ」
とMに語ってくれたのは、久しぶりに飲みに行った学生時代の友人でした。彼は昔からのクルマ好きが高じて念願の自動車会社に就職、今は宣伝部に所属しています。Mとは一緒に泊まりがけのロングドライブに出かけたり、草レースに挑戦したような仲。
「だってな、M、俺たちみたいなクルマ好きって、今の学生や若い人たちにはほとんどいない。走るのが大好き、なんてのはホンのひと握り。今じゃ変わり者扱いだよ」
うむむむ。なんとなくそう感じていたMですが、本職の彼に言われるととっても切実に聞こえます。だから、と彼は続けるのです。
「若い連中に興味を持ってもらえる、どうしても乗りたくなるような、そんなクルマを出すべきだったんだよ、俺たちメーカーは」
ここから話は、まあ多分に酒の勢いもあるのですが、こういう時代にこそ作るべきクルマとはなんぞや? というテーマに急発展していったのでした。
エコや燃費を重視する、そりゃ当り前だ。でも、それだけでいいのか。そもそも自分たちが若かった頃、どうしてあんなにクルマが欲しかったんだろ? お金は全然無かったけれど、必死にバイトしてボロボロの中古を買ってメンテして、走りに行ってはどこかを壊し、雑誌の記事を読んで見よう見まねで自分で修理して、そして再び、あてもなく走りに出かける…。あのエネルギーというか情熱は、どこから発していたんだろ?
Mは思うのです。それはクルマを運転して走らせるという行為が、単純にワクワクするような冒険だったから。そして乗っているクルマが、決して高級ではなく、それどころか当時の基準からいってもいかがなものかという程度の代物だったけど、でもちゃんとその冒険に応えてくれる大切な相棒だったから。
そうなんですよ。いつの間にか日本車にはそういった、若者でも手が届く価格で、豪華な装備はないけれど、ものすごい出力でもないけれど、でもキビキビ走るスポーティーなクルマ、というジャンルが無くなっちゃった。昔は結構ありましたよね、トヨタでいえばスターレット、日産ならばサニーGX5、ホンダのシビックRSあたりとか。そんな昔でなくても、トヨタMR-S、日産シルビアなんてのは若者が腕を磨くのにピッタリだったと思います。でもそういったクルマたちは、単価が安い故にメーカーの利ザヤが少ないのです。ですから、少し販売台数が落ちてくるとすぐに生産中止の憂き目を見ることになっちゃう。あーあ、悲しいことだなあ。
思えばMにしろ友人にしろ、必要だから乗ってたわけじゃないんです。全然必要じゃないのに、ガソリン代をなんとか工面して、嬉々として走り回っていたのでした。それはただ、楽しいから。あんなに貧乏だったくせにね。 この「必要で乗るんじゃなくて、楽しいから乗る」というのが、若い人たちに向けての大切な戦略になるんじゃないでしょうか。なぜならば、一度そういう味を知ってしまうと、人はクルマから離れられなくなるから。歳をとって収入が増え家族構成が変われば、選ぶクルマは変わるでしょうけど、でも「楽しさ」はいつも心の中に残っているから。
で、友人とMがその夜、到達した結論。日本のクルマメーカーは今こそ、軽のスポーツカーを作るべきである! それこそが若者にもう一度クルマという趣味をもたらせ、将来にわたる大事な顧客を生み出す結果になるのであーる! だってね、このコラムの第1回目にも書きましたが、軽自動車の自動車税は1年で7,200円ですよ。これって携帯電話の1か月分の費用とどっこいどっこいじゃないですか。メール打つより運転した方が、ずっと楽しいと思うけどな。
いや若者だけじゃない、軽自動車でスポーツカーが出たら、Mも買っちゃうなあ。なんか、ホントにワクワクさせてくれそうだし。 嬉しいことに、今現在でもダイハツのコペンがあります。噂ではホンダが名作ビートをFFで復活させる計画を持っている、とか。スズキもこの際、カプチーノを再デビューさせてくれないかなあ。などと、中年ふたり組は杯を重ねつつ、大いに盛り上がったことでした。あいつ、上層部に進言しそうな勢いでしたから、彼の会社からホントに出たりして。でも最新の技術で作られたそんなクルマが市販されたら、このお寒い状況にも明るい兆しが訪れる、そんな気がしませんか?